空き家・空き地入門

空き家・空き地の経緯

空き家・空き地の増加原因

① 都市部

高度経済成長期に地方各地から都市部へ人が集まりました。好景気も後押しして、子供が生まれて家族が増えれば自然とマイホームを持つという流れが出来上がりました。国も住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構)などの融資を設けることで、富裕層ではない一般的な家庭でも低金利のローンでマイホームを持つことができるようにしてきました。

その後、マイホームで育った子はやがて就職、結婚をして家族を持ちます。やがて別の家を買って生活をするようになり、いわゆる核家族化が進んでいきました。多くの子供が生まれた世代ですから住宅の購入者は多く、家は売れ続けました。一方、最初にマイホームを手に入れた親は年齢を重ねて、亡くなったり高齢者施設に入所したりするようになり、家に住む人がいないケースが増えていきました。子は自分の家を持っているので相続して元の家に住むことは少なくなりました。

② 地方

地方の農村や漁村は、高度経済成長期にかけて就職や進学で都市に若者が増えました。お盆や正月には帰省するものの、生活の基盤は都市部にあり、実家に戻るケースは少なくなりました。そのまま住み続けていた親が亡くなっても子が相続をして戻ってきて住むことはなく、また都市部から遠方になることも多く、管理もできずに荒廃してしまう土地や家が増えていきました。

空き家の問題点

空き家が放置されると、どのようなことが起こるのでしょうか?

家は、一般的には人が住まなくなるとすぐに傷むと言われます。風化による老朽化が急速に進むためです。また、昨今は台風、地震や大雨などの大きな自然災害によって家が壊れてしまうこともあると思います。修理が必要なものをそのまま放置してしまえば、①倒壊の危険があります。

また、不審者が出入りするようになれば②犯罪の温床となったり、庭木や雑草が生い茂るとたばこのポイ捨てによる③火災などや③放火が考えられ、周辺地域の治安の悪化につながります。④ごみの不法投棄等も考えられます。不衛生になれば、ネズミなどの棲み処となったり害虫の発生や悪臭が発生したりと、⑤ご自身の不動産価値の低下だけでなく、周辺地域の土地や建物の評価にも影響を与えかねないのです。誰も荒廃した街に住みたいとは思わないでしょう。そういった街は雰囲気も暗く、治安の心配がありますから幼い子供を持つ親が住みたい街にはならないのです。

空き地の問題点

一方、空き地が増えるとどのような問題点があるのでしょうか?

空き地は、土地ですから土があれば雑草が生えてきます。長年放置すれば、雑草が生い茂りることによる害虫の発生したり、隣地へ草木が越境することもあります。また、空き家と同じく、タバコのポイ捨てなどによる火災や放火の危険、警官の悪化、治安の悪化などが考えられます。

地方では、田畑や山林が荒れ放題で管理されなくなると上記のほかにも、害虫の発生など周辺の田畑で農業を営んでいる人へ迷惑をかけることにもなりかねません。また、先の東日本大地震では、管理されていない土地が多く、復旧作業が大幅に遅れている点も指摘されるなど大きな社会問題となっています。

空家対策特別措置法の施行

平成27年5月26日、「空き家対策特別措置法」が全面施行されました。

同法で定める「特定空家等」に該当すると、市町村長は、「助言又は指導」「勧告」「命令」などの改善措置をとることができるようになりました。この改善措置に従わない場合、行政代執行法に基づく代執行が可能になります。行政機関が強制的に改善をすることができるようになりました。

空き家・空き地の所有者の責任

空き家が傾いてきた場合

空き家が傾いてきた場合、どうなってしまうのでしょうか?不動産の所有者としてどのような責任を負うのでしょうか?ここでは、空き家所有者が抑えるべき3つのポイントを解説します。

 

①空家対策特別措置法に基づく処置

空家対策特別措置法は、適切な管理がされていない空き家に対して一定の要件に基づき「特定空家等」とします。この「特定空家等」に該当すると、市町村長は、建物所有者に対して除却・修繕の処置をさせることができます。

②所有権に基づく物上請求権(妨害予防請求権)

空家対策特別措置法以外でも請求を受ける可能性はあります。そもそも隣地に越境してしまえば、隣地所有権を侵害してしまいます。そこで、侵害する可能性が高い場合、それを予防するために「妨害予防請求権」が認められています。これは、不動産の所有権の効力として認められているものです。任意でこの請求に応じなければ、相手方から訴訟提起される可能性があります。

③代替執行

②の裁判の判決後もそれに従わないでいると、隣地所有者は裁判所の許可を得て、代わりに改善処置を行うことができます。これを「代替執行」といいます。なお、執行にかかる費用は、空き家所有者が負うことになります。

空き家から悪臭が出た場合

空き家を放置しているとゴミなどから異臭が発生することがあります。そういった悪臭が周りに広がった場合、所有者はどのような責任を負うのでしょうか。所有者が気をつけるべき点を解説します。

 

①空家対策特別措置法による是正措置

工場等の悪臭でもない限り、これらを直接取り締まる法律はありません。そこで、ごみ屋敷のようになった空き家に対して何とか対処できるようにするために空家対策特別措置法が設けられました。放置すれば衛生上有害となる状態であれば、市町村は「特定空家等」に認定して所有者に対して撤去・勧告等をすることができるようになりました。

 ②迷惑行為の差し止めや損害賠償請求

悪臭を放つ空き家の周辺住民には、上記①の「特定空家等」に該当しない場合、どのような対処方法があるのでしょうか。所有者には責任もありますが、一方権利もあります。自分の所有する不動産をどのように使用しても自由です。単に片づけをしなかったり、ゴミを集めて敷地内に置いているだけでは、それ自体違法ではなく何らの請求も受けることはありません。ただし、一般常識で考えて、受忍限度を超えて悪臭を放つなど、一般市民生活に支障が出るような場合は、これらの行為の差し止めや健康被害等の損害賠償請求が認められる可能性があります。程度の問題になります。

空き地に生える木や草が隣地境界を越境してしまった場合

空き地にある木や草を放置していたら根や枝などが隣の土地に入ってしまった場合、どうなるのでしょうか?土地は放置するとすぐに草が生えます。次第に虫が発生したりもします。空き地の所有者としてはどのような点に気をつけるべきでしょうか。枝の場合と根の場合では少し対応が違うので気をつけるようにしましょう。

 

①枝

民法233条第1項では、「隣地の竹木が境界線を越えるときは、その竹木所有者に、その枝を切除させることができる」としています。しかし、これはあくまで相手に請求できるにとどまり、勝手に切ることはできません。土地所有者が切除を拒否した場合、任意での解決は難しく相手方は、最終的には裁判をして切除を求める形になります。

②根

民法233条第2項では、「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」としています。こちらは上記①の枝と違い、勝手に切ることができます。

 

しかし、以上は、原則論です。例えば、隣地所有者に対して具体的な損害もないのに枝や根を切ってしまった場合、それによって木が枯れてしまえば、隣地所有者の主張は認められない可能性があります。

マンションの所有者の責任

マンション特有の空き家問題

戸建ての空き家とマンションの空き家は同じような点もありますが、違う点もあります。ここではマンション特有の空き家に関する問題点をご紹介します。

マンションは区分所有法という特別法の適用を受けます。自分の部屋である専有部分以外の廊下などの共用部分は、マンションの所有者の共有になります。この共用部分の維持管理費用は各部屋のマンション所有者が共同して負担することになります。つまり、マンションの一室の空き家が進むことは、管理費用の滞納やまた、老朽化した場合の外壁塗装などの大規模修繕費用の積み立て費用(修繕積立費)滞納にもつながるのです。そうなると、マンション全体に管理が行き届かなくなり、不動産の価値を下げることになりかねません。老朽化したマンションの建て替え等も費用不足で進まないことも考えられ、今後社会問題となる可能性があります。

マンションには通常管理会社が入っていますので共用部分の管理不備等は、管理会社にまずは問い合わせることになります。

行政機関の対応

空家対策特別措置法

平成27年5月26日、「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、「空家対策特別措置法」という)が完全施行されました。

民法等の既存の法律だけでは対応できない土地や建物に対して、行政が積極的に関与して是正できるようにするために制定されました。その背景には、少子高齢化、人口の減少などにより適切に管理できない不動産が増えたことで、防犯、衛生、景観などの悪化により周辺住民の生活環境に影響を及ぼすことが多くなったことがあります

空き家・空き地はどうすれば一番良いのか?

空き家・空き地の活用方法

いざ土地や建物といった不動産を相続してもお困りではありませんか?不動産投資などをやってきた人は別として、普通の会社員などで生活をしてきた人にとって不動産は厄介なものです。所有するだけで税金や責任が発生してしまいますから。理由はともあれ、実際に不動産を所有することになった場合、ぜひ活用術を考えてみて下さい。ここでは、以下、代表的なものをご紹介いたします。ご参考にして下さい。

 

① そのまま自宅として住む

 もし賃貸に住んでいる相続人の方がいる場合は、実家を自宅として住むなどの活用方法があります。実家を相続する代わりに他の相続人にお金を少し渡したり、他の相続財産を放棄して実家を取得するなどで遺産分割をする場合です。実家もそのまま残りますし、可能であれば良い方法です。

② 家を他人に貸す

 実家を使う人がほかにいない場合、他人に貸すのもひとつです。ただし、自分たちで使う場合とは違い、リフォームなどをしてきれいにする必要があります。キッチン、トイレやお風呂などの水回りや外壁塗装など他人がお金を払って借りたいと思わせる外観を作ることが大切です。したがって、初期費用や退室の際の原状回復費用や借主募集費用等が掛かることが想定されます。

③ 土地を駐車場として貸す

 カーシェアリングも一般的なものとなり、都市部を中心に駐車場のニーズは高まっております。各業者もしのぎを削り駐車場用地を確保しようとしていますので、条件の良い業者に任せれば、安定した賃料収入を得ることができます。また、一時的な利用としてこの駐車場利用を検討してもよいでしょう。将来、子供が家を建てるので、当面活用したい場合など良いかもしれません。

④ 民泊として貸す

 昨今は、外国人旅行客のみならず、日本人の活用も目立っています。旅行以外にも活用をする人が増えてますます注目されている活用法です。ただし、法改正もあり、その運営には厳格なルールが設けられました。うまく条件が合えば、検討してもよい活用方法です。

⑤ マンション等を建てて、不動産経営をする

 土地にアパートやマンションを建てて、長期的な賃料収入を得られる方法です。駅から徒歩10分以内など建てるエリアがとても大切です。ご自身の物件が今後10年以上賃貸が見込める地域か否か、この判断は業者任せにせず必ず自分で行って下さい。大切なのは、新築後すぐではなく、20年以上経って、地域の競合マンションに勝てなくなってきたときにも勝算が見込めるかです。退去時の原状回復費用や定期的なメンテナンス費用など綿密にシュミレーションをするようにしましょう。銀行からの借入金の返済がポイントです。

 また、相続対策としてあえて現金や預金を不動産に変えておく必要があるときは、相続税のことばかりではなく、ご相続発生後の遺産分割の場面も想定してあげると相続人の方は助かると思います。遺言や民事信託などあらゆる方法で最適解を見つけるようにしましょう。

⑥ 家や土地を売却してお金にする

 不動産を売ってお金にする。とてもシンプルな方法です。所有しなくなるので、今後維持管理する必要がなくなり、維持管理費用や近隣への配慮などのストレスはなくなります。また、一定の現金を手にするので、欲しいものを買ったり、お子様の教育費に使うなど様々な使途に利用することができます。この点が一番の利点です。不動産そのものの生かし方はどうしても限定的なものになってしまいます。お金に換価してしまえば、その時必要なものに使うことができるのです。

なお、不動産の売却には諸費用がかかかります。売る際の代表的な諸費用は、次のとおりです。

 1 測量費用

 2 建物解体費用や家にある残置物の処分費用

 3 売買仲介手数料

 4 登記費用

売却の際は、受け取った売買代金からこれら諸費用を差し引き、譲渡所得税も考慮して、残ったお金を自由に活用するようにしましょう。また、売却利益は売却した年の所得となるため、翌年の国民健康保険料等の社会保険料や市県民税などが上がる可能性もあるので、その点も忘れないように注意しましょう。