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相続不動産の売却前に押さえる2つのポイント|登記と売り時【名古屋の司法書士】
相続に関する気になるトピックや情報を配信しています。ご興味のある記事がございましたら、ご参考にしてみて下さい。
売却の成否を分けるのは、物件の良し悪しだけではありません。「名義の準備」と「時期の見極め」——この2つを知らないまま動き出すと、売却が止まり、税金で損をします。
「遠方にある実家を相続したけれど、戻る予定はないので売りたい」「相続した土地を持ち続けても、固定資産税と管理の負担ばかりが増えていく」。名古屋市中区の当事務所には、こうしたご相談が毎月のように寄せられます。住む予定のない相続不動産にとって、売却は管理や税負担から解放される有力な選択肢です。
ただし、相続した不動産の売却は、ご自身で購入した不動産を売る場合とは決定的に違う点が2つあります。1つは、売却の前に相続登記(名義変更)という法律上の手続きが必要なこと。もう1つは、「いつ売るか」によって税金の額、つまり手元に残るお金が数百万円単位で変わることです。
今回は、司法書士事務所と不動産事務所を併設する名古屋のごとう司法書士事務所が、相続した不動産を売却するときに必ず押さえておきたい2つのポイント——「名義の注意点」と「お得な売り時」——を、2026年に始まった登記の新制度にも触れながら、順を追ってご紹介します。
最初の関門は価格でも買主探しでもなく「名義」。亡くなった方の名義のままでは、どんな好条件の話が来ても売却はできません。
相続した不動産の売却は、不動産会社への査定依頼からではなく、実は法務局の登記の確認から始まります。売主になれるのは登記上の所有者だけだからです。まずは、その前提となる相続登記の仕組みから確認していきましょう。
不動産の権利は、役所が自動的に書き換えてくれるものではありません。「申請した人」だけが名義を手に入れます。
不動産には登記という制度があり、法務局が管理する登記簿に、土地の所在・面積・地目、建物の構造・床面積といった物理的な情報と、「この不動産の所有者は誰か」という権利の情報が記録されています。
注意していただきたいのは、この登記簿の情報は自動的には書き換わらないという点です。所有者が亡くなっても、登記簿の名義は亡くなった方(被相続人)のまま残り続けます。相続人が戸籍謄本などの必要書類をそろえ、法務局に所有権移転登記——いわゆる相続登記——を申請して、はじめて名義が相続人に変わるのです。
相続登記の前提としては、誰がその不動産を取得するのかを確定させる必要があります。遺言書があれば原則としてその内容に従い、なければ相続人全員で遺産分割協議を行って取得者を決め、協議書を作成します。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍の収集には1〜2か月かかることも珍しくなく、相続人に海外在住の方や外国籍の方がいらっしゃる場合はさらに時間を要します。
なお、2026年2月からは、相続人が「亡くなった親が全国のどこに不動産を持っていたか」を法務局でまとめて調べられる所有不動産記録証明書の制度が始まりました。「実家のほかに、山林や私道の持分があるらしいが正確に分からない」という場合でも、被相続人名義の不動産の一覧を証明書として取得できるため、売却や遺産分割の前の財産調査がぐっとしやすくなっています。こうした新しい制度も活用しながら、まずは「何を・誰が」相続するのかを固めることが売却への第一歩です。
「期限も義務もない」は過去の話。今は「3年以内・怠れば過料」の時代です。過去の相続も対象になります。
かつては、相続登記に法律上の期限も義務もありませんでした。その結果、名義変更が何世代にもわたって放置され、所有者が分からない土地が全国で九州本島の面積を超えるほどに膨らみ、深刻な社会問題となりました。
この反省から法律が改正され、2024年4月1日から相続登記は法律上の義務になっています。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。
特に注意していただきたいのが、義務化より前に発生した相続にも適用されるという点です。「祖父の代から名義がそのまま」という不動産も例外ではなく、経過措置の期限である2027年3月31日が目前に迫っています。名古屋法務局管内でも、義務化を機に古い相続登記のご依頼が急増しており、戸籍の収集や相続人の調査に想像以上の時間がかかるケースが目立ちます。遺産分割協議がすぐにまとまらない場合には、相続人申告登記という簡易な手続きでひとまず義務を果たす方法もありますが、これは名義変更そのものではないため、売却するには結局、相続登記が必要です。
さらに2026年4月からは、登記官が住民基本台帳ネットワークなどの情報をもとに、亡くなった所有者の登記に死亡の事実を示す符号を職権で表示する制度も動き出しました。登記簿を見れば「この名義人はすでに亡くなっている」ことが第三者にも分かる時代になり、放置された相続不動産は、いわば公に見える形になりつつあります。「売るときが来たらまとめて登記すればいい」という先送りは、法律の上でも実務の上でも通用しなくなりました。
義務だから、だけではありません。登記がなければ「自分の不動産だ」と主張できず、買主も怖くて買えないからです。
過料があるから登記する——それも間違いではありませんが、売却を考える方にとっての本質は別のところにあります。民法は、不動産の権利は登記をしなければ第三者に対抗できない、と定めています。相続によって所有権自体は相続人に引き継がれますが、登記名義を備えていない限り、「この不動産は私のものです」と取引の相手方に法的に主張できないのです。
買主の立場で考えると、この意味がよく分かります。数千万円を支払う買主は、売主が本当の所有者であることを登記簿で確認したうえで契約に臨みます。登記簿の名義が亡くなった方のままでは、金融機関の住宅ローン審査も通りませんし、仲介する不動産会社も安心して販売活動ができません。実務では、売買代金の決済と同時に買主への所有権移転登記を行うため、遅くとも決済までには「被相続人→相続人」の相続登記が完了している必要があります。登記は権利の流れどおりに行う必要があるため、亡くなった方の名義から買主へ直接名義を移すことはできないのです。
また、相続人が複数いる場合には、「誰の名義にして売るか」を遺産分割協議で決めておくことが重要です。不動産を売って代金を分ける方針(換価分割)であれば、代表者名義に登記して売却する方法もよく使われますが、名義のとり方は税金の負担にも影響します。売却を見据えた相続登記は、単なる事務作業ではなく売却戦略の一部です。着手の段階から、司法書士など専門家に見通しを立ててもらうことをおすすめします。
キーワードは「相続から3年」。税金の特例には期限があり、同じ不動産を同じ価格で売っても、時期によって手残りが大きく変わります。
名義の準備が整ったら、次に考えるべきは「いつ売るか」です。相続不動産の売却では、利益(譲渡所得)に対して所得税・住民税がかかりますが、相続ならではの期限付きの税制優遇が2つあり、どちらも「相続から約3年」が目安になります。
1つ目は、相続税を納めた方が使える取得費加算の特例です。相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで——つまり相続開始からおおむね3年10か月以内に売却すると、納めた相続税のうちその不動産に対応する部分を取得費に上乗せでき、譲渡所得税を圧縮できます。たとえば売却益が1,000万円出るケースで、その不動産に対応する相続税が300万円あれば、課税対象は700万円まで下がり、長期譲渡の税率(約20パーセント)なら税額はおよそ60万円軽くなる計算です。
2つ目は、亡くなった方がおひとりで住んでいた古い家屋を売る場合の、いわゆる空き家の3,000万円特別控除です。昭和56年5月31日以前に建築された家屋を、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、耐震基準を満たす形で、または取り壊すなどして1億円以下で売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円(取得した相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できます。適用期限は2027年12月31日までの売却とされており、要件の詳細な確認は欠かせませんが、当てはまれば税額がゼロになることも珍しくない、効果の大きい特例です。
注意したいのは、この2つの特例は併用できないことです。どちらが有利かは相続税の額や売却益の大きさによって変わるため、売り出し前に税理士等と試算しておくのが確実です。また、相続した不動産の所有期間は被相続人が所有していた期間を引き継げるため、親御さまが長年住んだ実家であれば、相続直後に売っても税率の低い長期譲渡所得として扱われます。「5年待たないと税率で損をする」という心配は通常不要で、むしろ待つほど特例の期限が近づいていきます。
そしてもう1つ、税金以外の視点も忘れてはいけません。空き家は人が住まなくなった瞬間から傷みが加速し、建物の資産価値は年々下がっていきます。管理が不十分で特定空家などに指定されれば、固定資産税の負担が跳ね上がるおそれもあります。名古屋市内でもエリアによって不動産市況の温度差が大きくなっており、「相続から3年」という税制の締切と、市場の売り時の両方をにらみながら、遺産分割協議→相続登記→売却活動と逆算してスケジュールを組むことが、手残りを最大にする一番の近道です。
売れる状態をつくる相続登記と、期限から逆算する売り時の判断。2つのポイントは、早く動いた人ほど有利になります。
今回は、相続した不動産を売却するときの2つのポイントをご紹介しました。
1つ目のポイントは名義です。相続した不動産は、相続登記を済ませなければ売却できません。しかも相続登記は2024年4月から義務化され、義務化前の相続についても2027年3月31日という期限が迫っています。2026年からは所有不動産記録証明書による財産調査や、亡くなった名義人への符号表示といった新しい制度も始まり、相続登記を取り巻く環境は「早くやった人が得をする」方向へ大きく動いています。
2つ目のポイントは売り時です。取得費加算の特例はおおむね相続から3年10か月、空き家の3,000万円特別控除は相続から3年目の年末が目安と、相続不動産の税制優遇には「3年」前後の期限がついています。戸籍収集や遺産分割協議、売却活動にかかる時間を考えると、相続が発生したら早めに全体のスケジュールを描くことが何より大切です。
名古屋市中区丸の内のごとう司法書士事務所は、司法書士事務所と不動産事務所を併設し、遺産分割協議書の作成から相続登記、売却活動、決済・引渡しまでをひとつの窓口でお手伝いしています。税額の試算が必要な場面では提携税理士とも連携し、お客さまごとの事情に合わせたオーダーメイドのご提案を心がけています。相続した不動産の売却が気になり始めた方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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