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答えは「後の日付が優先。ただし、ぶつかる部分だけ」。このルールを知らないと、遺産分けが迷子になります。
遺品整理をしていたら、仏壇の引き出しから自筆の遺言書。数日後、今度は金庫から公正証書遺言。しかも内容が食い違っている——。ドラマのような話に聞こえますが、相続の現場では決して珍しくありません。遺言は何度でも書き直せるものだからこそ、古い遺言と新しい遺言が両方残ってしまうことがあるのです。
このとき、「公正証書の方が偉いから公正証書が勝つ」と思っていたら、それは誤解です。「新しい方が全部勝つ」も、実は正確ではありません。法律のルールは、後の遺言が優先、ただし内容がぶつかる部分だけ。つまり、2通の遺言が部分的に両方生きることもあるのです。さらに、古い遺言を「もう要らないから」と捨ててしまうと、取り返しのつかないペナルティを受けるおそれもあります。このページでは、名古屋市中区丸の内の司法書士が、複数の遺言書が出てきたときの優先ルール、遺言の撤回とみなされる4つの場合、やってはいけないこと、そしてこれから書き直す方のための正しい方法までを、実務の目線でご説明します。
公正証書か自筆かの格の差はありません。見るのは方式ではなく、日付です。
基本のルールから確認しましょう。遺言者は、いつでも、何度でも、遺言を撤回したり書き直したりできます。これは法律が保障する権利で、「二度と書き直しません」と約束しても、その約束自体が無効になるほど徹底しています。遺言は、亡くなる瞬間まで変わり得る「最後の意思」を形にする制度だからです。そして、前の遺言と後の遺言の内容がぶつかる(抵触する)ときは、ぶつかる部分について、前の遺言を撤回したものとみなされます。ポイントは2つ。第一に、優先されるのは日付の後の遺言であること。第二に、無効になるのは抵触する部分だけで、ぶつからない部分は前の遺言も生きていることです。
具体例で見ましょう。10年前の公正証書遺言に「自宅は長男に、預金は二男に」とあり、3年前の自筆証書遺言に「自宅は長女に」とだけ書かれていたとします。自宅については2通が真っ向からぶつかりますから、後の自筆証書遺言が優先して、自宅は長女へ。一方、預金については後の遺言は何も触れていないので、前の公正証書遺言の「預金は二男に」が生きたまま。結果として、2通の遺言を組み合わせて相続を進めることになります。ここで大切なのが、方式に優劣はないというルールです。公正証書遺言を、後から書いた自筆証書遺言で変更することもできますし、その逆も可能です。「公正証書だから安心、あとから出てきた手書きのメモ風の遺言に負けるはずがない」という思い込みは、実務では通用しません(もちろん、後の自筆証書遺言が形式や能力の点で無効なら、話は別です)。
だからこそ、日付が命になります。自筆証書遺言に日付がなければ、その遺言自体が無効。「令和何年何月吉日」のような書き方も、日付を特定できないため無効です。では、同じ日付の遺言が2通あって内容がぶつかったら? 先後を決められない以上、抵触部分の扱いは深刻な解釈問題になり、争いの火種になります。また、後の遺言が書かれた時期に遺言者の判断能力が衰えていた場合、「後の遺言は無効だ」という遺言能力をめぐる争いが起きることもあります。認知症の進行後に書き換えられた遺言は、複数遺言トラブルの典型例。「最後に同居していた子の家で、亡くなる直前の日付の遺言が見つかった」という場面では、内容より先に、その日の判断能力と作成の経緯が争点になります。日付は、優先順位を決めるだけでなく、その時点の判断能力を問う基準点にもなるのです。
遺言書を書き直していなくても、「撤回した」とみなされる行動があります。
遺言の撤回は、新しい遺言で行うのが基本形ですが、法律は、遺言者の行動から撤回の意思を読み取る場面も定めています。整理すると4つ。第一に、後の遺言で前の遺言と抵触する内容を定めた場合(前章のとおりです)。第二に、遺言の後に、遺言と抵触する生前の処分をした場合。たとえば「自宅は長男に」と書いた後、その自宅を売却したり、誰かに贈与したりすれば、その部分の遺言は撤回されたことになります。遺言に書いた財産が亡くなったときに存在しなければ、その条項は空振りになる、と考えると分かりやすいでしょう。第三に、遺言者が遺言書を故意に破棄した場合。第四に、遺言の目的物を故意に破棄した場合です。
ここで、種類ごとの重要な違いをひとつ。自筆証書遺言は、遺言者本人が破り捨てれば撤回になりますが、公正証書遺言は、手元の正本や謄本を破っても撤回になりません。原本が公証役場に保管されているからです。公正証書遺言をやめたいなら、新しい遺言で撤回するしかない。同じように、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言も、手元に原本がないため、保管の撤回手続きや新しい遺言による撤回が必要です。「破って捨てたから、もうあの遺言はない」が通用しない遺言がある——書き直しを考えている方には、必ず知っておいてほしいポイントです。
見つけた側の注意も、はっきりお伝えします。古い遺言書も、新しい遺言書も、勝手に捨ててはいけません。自筆証書遺言(保管制度を使っていないもの)は、古いものも含めてすべて家庭裁判所の検認が必要で、封のある遺言書を勝手に開封すれば過料の対象になります。それ以上に恐ろしいのが、相続欠格です。自分に不利な遺言書を隠したり、破棄したりした相続人は、相続する資格そのものを失います。「古い方はもう効力がないだろうから」と自分で判断して処分することは、法律上も、家族の信頼の上でも、絶対にしてはいけません。出てきた遺言書は、全部そのまま保全して、検認と内容の突き合わせへ。注意したいのは、検認は遺言の有効・無効を判定する手続きではないこと。検認を通ったから有効、という意味ではなく、そこから先の「どの条項が生きていて、どの条項が撤回されているか」の判定は、別の作業なのです。この読み解きは、専門家と一緒に行うのが安全です。あわせて、「もう1通あるかもしれない」の確認も忘れずに。公正証書遺言は、公証役場の遺言検索システムで、相続人が全国分をまとめて照会できます。法務局の保管制度を使った自筆証書遺言も、保管の有無を証明書で確認できます。手元の2通がすべてとは限らない——この確認をしてから、突き合わせに進んでください。
最後に、これから書き直す方への正しい方法です。実務の定石は、一部だけを直すのではなく、新しい遺言の冒頭に「遺言者は、本遺言以前に作成した遺言をすべて撤回する」という全部撤回の条項を置いて、全体を作り直すこと。これで古い遺言との抵触判定という厄介な問題が最初から消えます。書き直したら、古い遺言書は(自筆で手元にあるなら)回収して処分し、公正証書なら新遺言で撤回した事実を家族か遺言執行者に伝えておく。伝えないまま古い正本だけが金庫に残ると、まさに本記事のような「2通問題」を次の世代に残してしまいます。財産の売却や大きな贈与をしたときは、遺言との食い違いが生まれていないか点検する。そして、なぜ内容を変えたのかを付言事項に書き添えれば、「前の遺言と違う」ことへの家族の動揺も和らぎます。実例をひとつ。お父様の死後、公正証書遺言と、その5年後の自筆証書遺言が見つかったご相談がありました。検認を経て突き合わせると、自宅の帰属だけが抵触し、預金や株式の条項は公正証書が有効と整理できました。2通の遺言を並べた一覧表を作って相続人全員に説明したところ、「ルールが分かれば納得です」と、争いなく登記まで完了。複数の遺言は、正しく読めば怖くありません。怖いのは、思い込みで動くことです。
書く・直す・読む・実現する。遺言のすべての場面をお手伝いします。
検認の申立てから登記まで、段取りを整理してご案内します。
当事務所は、相続と不動産を中心業務とする司法書士事務所であり、代表は宅地建物取引士として不動産事務所も経営しています。複数の遺言書の突き合わせのような専門性の高い場面も、わかりやすい言葉で丁寧にご説明します。
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お気軽にご相談下さい。
後の遺言が、ぶつかる部分だけ勝つ。見つけたら全部保全、書き直すなら全部撤回から。
遺言は何度でも書き直せ、複数の遺言書が出てきたら、方式の優劣ではなく日付で判断します。後の遺言が優先するのは抵触する部分だけで、残りは前の遺言も有効。遺言後の売却や贈与、自筆遺言の破棄も撤回とみなされますが、公正証書遺言は手元の書類を破っても撤回になりません。見つけた遺言書は古いものも勝手に捨てず、すべて検認へ。隠匿や破棄は相続欠格という重いペナルティにつながります。これから書き直す方は、全部撤回の条項を置いて作り直し、理由を付言に。遺言は、書いた日で止まらず、人生と一緒に育てていくもの。数年に一度の点検と、正しい書き直しの作法を、私たちがお手伝いします。
ごとう司法書士事務所は、名古屋市中区丸の内を拠点に、「難しいことを簡単に」という理念のもと、法律用語のわかりにくさがトラブルにつながらないよう、家族や相続人の方によってすべて異なる相続の形に臨機応変に対応しています。遺言書の検認や遺言に基づく相続登記から、遺言の作成・書き直しのサポート、不動産の売却・活用まで、司法書士と宅地建物取引士の両輪で、女性やご高齢の方、外国籍の方のご相談も丁寧にお受けしています。
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※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。遺言の有効性や抵触の判定は個別の事情により異なりますので、実際のお手続きにあたっては専門家にご相談ください。
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