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売って終わりではなく、翌年の納税までがひとつの流れです。最初に全体像をつかんでおきましょう。
親御さまが遺してくれた名古屋の実家を相続したものの、ご自身はすでに別の場所に自宅を構えていて住む予定がない。遠方に住んでいるため、空き家の管理や固定資産税の負担が重く感じられる――。そのようなとき、相続した不動産を売却して現金化することは、とても合理的な選択肢のひとつです。現金にすれば相続人同士で分けやすくなり、管理の悩みからも解放されます。
ただし、ここで見落とされがちなのが「売ったあとの税金」です。相続した不動産を売却して利益が出ると、譲渡所得税という税金がかかります。しかも納税のタイミングは売却した年ではなく、翌年の確定申告のとき。売却代金を使ってしまったあとに納税額を知って慌てる、というケースは決して珍しくありません。
この記事では、相続した不動産を売却するときにかかる税金の種類、譲渡所得税の計算方法と納税時期、そして税金を安くできる特例について、名古屋のごとう司法書士事務所の司法書士・宅地建物取引士がやさしく解説します。
まずは税金の全体像から。売却までの各場面で、それぞれ別の税金が登場します。
結論からお伝えすると、相続した不動産の売却では、主に次の三つの税金が関係します。売買契約書を作成するときにかかる「印紙税」、売却前の名義変更(相続登記)の際にかかる「登録免許税」、そして売却で利益が出たときにかかる「譲渡所得税」です。
ここで大切なのは、相続した不動産は、亡くなった方(被相続人)の名義のままでは売却できないという点です。売却の前提として、必ず相続登記によって相続人の名義に変更する必要があり、このときに登録免許税(原則として固定資産税評価額の1,000分の4)がかかります。
さらに、2024年4月1日から相続登記の申請は法律上の義務になりました。不動産を相続で取得したことを知った日から原則3年以内に登記申請をしないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象となる可能性があります。「売るかどうか決めてから登記しよう」と後回しにしていると、義務の期限を過ぎてしまうこともあるため、売却を検討している方こそ早めの相続登記が安心です。
たとえば、名古屋市名東区の実家を相続した方が「兄弟で売却の方針がまとまってから登記すればよい」と考えて数年放置してしまい、いざ買い手が見つかった段階で慌てて相続登記を進める、というケースは実務でもよく見られます。話し合いに時間がかかりそうな場合でも、登記と売却の段取りは早めに専門家へご相談ください。
計算のしくみと税率を知れば、手取り額の見通しが立てられます。
譲渡所得税とは、不動産を売却して利益(譲渡所得)が出たときにだけかかる税金です。売却代金の全額に課税されるわけではなく、次の計算式で求めた「利益」の部分に課税されます。
譲渡所得=譲渡価額(売却代金)-(取得費+譲渡費用)
「取得費」とは、その不動産を手に入れるためにかかった費用のことで、相続した不動産の場合は、亡くなった方が購入したときの代金や購入時の諸費用を引き継ぎます。建物については減価償却費相当額を差し引いて計算します。「譲渡費用」には、仲介手数料、売買契約書の印紙代、測量費用、建物の解体費用など、売却のために直接かかった費用が含まれます。
税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって変わります。所有期間が5年を超える「長期譲渡所得」なら税率は20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税の合計)、5年以下の「短期譲渡所得」なら39.63%です。ここで相続不動産に特有の重要なポイントがあります。相続で取得した不動産は、亡くなった方が取得した時期をそのまま引き継ぐため、親御さまが長年住んでいた実家であれば、相続してすぐに売却しても長期譲渡所得の税率が適用されるのが通常です。
注意したいのが、取得費がわからない場合です。何十年も前に購入した実家では、当時の売買契約書が見つからないことがよくあります。その場合、取得費は「譲渡価額×5%」の概算取得費で計算せざるを得ず、税負担が大きくなりがちです。
たとえば、相続した土地建物を2,500万円で売却し、譲渡費用が100万円かかったケースで考えてみましょう。購入時の契約書が見つからず概算取得費(125万円)で計算すると、譲渡所得は2,500万円-(125万円+100万円)=2,275万円となり、長期譲渡所得なら税額は約462万円にのぼります。一方、親御さまが1,800万円で購入した契約書が見つかれば、譲渡所得は大幅に圧縮され、税額も数十万円単位まで下がる可能性があります。売却を考え始めたら、まず権利証や購入時の売買契約書、領収書などの資料を探すことが、何よりの節税につながります。
金額はいくらか、誰が負担するのか。契約前に確認しておきたいポイントです。
印紙税は、不動産の売買契約書を作成したときにかかる税金で、契約書に収入印紙を貼り、消印することで納税したものとみなされます。
税額は契約金額によって異なります。不動産の売買契約書については軽減措置が設けられており、2027年3月31日までに作成されるものは、たとえば契約金額が1,000万円超5,000万円以下なら本則2万円のところ1万円、5,000万円超1億円以下なら本則6万円のところ3万円に軽減されています。
売買契約書は通常、売主用と買主用の2通を作成し、それぞれに印紙を貼ります。自分の分の印紙代をそれぞれが負担するのが一般的ですが、負担方法は契約によって異なることもあるため、契約前に確認しておきましょう。印紙の貼り忘れや消印漏れがあると、本来の税額より重い過怠税がかかるおそれもあるため、契約実務に慣れた専門家のチェックを受けると安心です。
納税は「売った年」ではなく「翌年」。資金を残しておくことが大切です。
結論からお伝えすると、譲渡所得税は、不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、所得税分を納付します。住民税分は、確定申告をもとに翌年度に課税され、6月以降に納付書などで納めるのが一般的です。つまり、売却代金を受け取ってから実際の納税までには、半年から1年以上のタイムラグがあるのです。
このタイムラグこそが、相続不動産の売却でもっとも注意したい落とし穴です。売却代金を相続人同士で分けたり、住宅ローンの返済や住み替えに充てたりしたあとで、翌年になって数百万円の納税額を知って慌てる方は少なくありません。売却代金を受け取ったら、税額の見込み分をあらかじめ取り分けておくことを強くおすすめします。
また、申告期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税といったペナルティが上乗せされる可能性があります。給与所得者の方で普段は確定申告をしない方も、不動産を売却して利益が出た年は申告が必要です。さらに見落としがちなのが、後ほどご紹介する特例を使って税額がゼロになる場合でも、確定申告そのものは必要だという点です。「税金がかからないなら申告もいらない」と思い込んで期限を過ぎると、特例の適用が受けられなくなるおそれがあります。
なお、具体的な税額の計算や申告書の作成は税理士の専門分野です。当事務所では、相続登記や売却のサポートとあわせて、必要に応じて信頼できる税理士との連携もご案内していますので、申告まで含めて安心して進めていただけます。
期限内に売るかどうかで税額が大きく変わります。使える特例を早めに確認しましょう。
譲渡所得税には、要件を満たせば税額を大きく減らせる特例があります。相続不動産の売却で特に重要なのは次の三つです。
一つめは「取得費加算の特例」です。相続税を納めた方が、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(およそ相続開始から3年10か月以内)にその相続財産を売却した場合、納めた相続税のうち売却した不動産に対応する部分を取得費に加算できます。取得費が増える分だけ譲渡所得が圧縮され、税額が下がるしくみです。相続税を納めた方にとっては、「3年10か月」という期限が売却時期を考えるうえでの大きな目安になります。
二つめは、マイホームを売ったときの3,000万円特別控除です。たとえば、亡くなった親御さまと同居していたご自宅を相続し、その後もご自身の住まいとして使っていた家を売却する場合など、ご自身の居住用財産の売却にあたれば、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける可能性があります。
三つめは、相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除(空き家特例)です。亡くなった方が一人で住んでいた昭和56年5月31日以前建築の家屋を相続し、一定の要件を満たして2027年12月31日までに売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円(取得した相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できます。耐震改修や取壊しの要件、売却代金1億円以下の要件などがあり、市区町村の確認書の取得も必要です。
注意したいのは、これらの特例には併用できない組み合わせがあることです。たとえば取得費加算の特例と空き家特例はどちらか一方の選択適用となるため、どちらが有利かは売却前の試算が欠かせません。適用要件は細かく、制度も改正されることがあるため、売却を決める前に専門家へご相談いただくのが確実です。
相続登記から売却、そして納税まで。全体を通した段取りが手取り額を左右します。
相続した不動産の売却では、売買契約時の印紙税、名義変更の登録免許税、そして利益が出たときの譲渡所得税がかかります。譲渡所得税の納税は売却した翌年の確定申告(2月16日〜3月15日)であるため、売却代金から納税資金を確保しておくことが大切です。また、取得費加算の特例や空き家特例には「相続開始から3年10か月」「2027年12月31日まで」といった期限があり、売却のタイミングそのものが税額を左右します。
つまり、相続不動産の売却は「いくらで売れるか」だけでなく、「いつ売るか」「税金を引いていくら手元に残るか」まで含めて計画することが成功のポイントです。そのためには、相続登記・売却活動・税務がバラバラに進むのではなく、全体を見渡せる専門家がそばにいることが心強い支えになります。
名古屋市中区丸の内のごとう司法書士事務所は、司法書士と宅地建物取引士の資格をあわせ持ち、相続登記から相続不動産の売却まで一つの窓口でサポートできることが強みです。お客さまごとの事情に合わせたオーダーメイドのご提案と明瞭な費用のご案内を心がけており、女性やご高齢の方、外国籍の方のご相談も丁寧にお手伝いしています。必要に応じて税理士とも連携し、納税まで見据えた安心の売却計画をご一緒に考えます。
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