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要件・メリット・落とし穴。この特例だけを、1ページで深く理解できるよう解説します。
一人暮らしをしていた親御さまが亡くなり、誰も住まなくなった実家。全国の空き家が約900万戸と過去最多を更新するなか、こうした「相続空き家」は増え続けています。国はその対策として、相続した空き家を早期に売却した人の税金を大きく優遇する制度を用意しました。それが、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる、通称「空き家特例」です。
この特例が使えるかどうかで、実家の売却で手元に残るお金は数百万円単位で変わります。一方で、適用要件は細かく、「知らずに貸してしまった」「先にリフォームしてしまった」といった、たった一つの行動で権利を失ってしまう繊細な制度でもあります。
このページでは、名古屋市中区丸の内の司法書士が、空き家特例の目的・要件・メリット・注意点を、この特例ひとつに絞ってじっくり解説します。相続した実家の売却をお考えの方は、売却活動を始める前に、ぜひ最後までお読みください。
狙いは「危険な空き家になる前に、市場に戻してもらう」ことです。
この特例は、国土交通省では「空き家の発生を抑制するための特例措置」、国税庁では「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」と呼ばれています。名前のとおり、目的は空き家の発生抑制です。
相続をきっかけに生まれる空き家の多くは、旧耐震基準の時代に建てられた古い家屋です。放置されれば倒壊や治安悪化の原因となり、地域の安全と資産価値を損ないます。名古屋市を含む都市部でも、住宅街の一角で朽ちていく相続空き家は年々目立つようになっており、決して過疎地だけの問題ではありません。そこで国は、「相続人が早めに売却し、耐震化するか取り壊して次の利用につなげてくれるなら、譲渡所得税を大幅にまけましょう」という優遇を設けました。
この制度趣旨を知っておくと、後述する細かな要件がすっと理解できます。対象が昭和56年5月31日以前(旧耐震基準)の建築に限られるのも、耐震化または取壊しが求められるのも、相続から3年前後という期限が切られているのも、すべて「危険な空き家を早く市場に戻す」という目的から来ているのです。
ご実家が当てはまるか、「家屋」と「売り方」の2つの面から確認しましょう。
特例の適用要件は、大きく「家屋の要件」と「譲渡の要件」に分かれます。
まず家屋の要件です。第一に、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。第二に、マンションなどの区分所有建物でないこと。第三に、相続開始の直前に被相続人が一人で住んでいたこと。同居のご家族がいた場合は対象外ですが、老人ホーム入所には例外があります。具体的には、要介護認定や要支援認定などを受けて入所し、入所から相続開始までの間、その家が事業や貸付けに使われず、家財の保管など被相続人による一定の使用が続いていた場合には、「直前まで居住していた」ものとして扱われます。晩年を施設で過ごされた親御さまの実家でも諦める必要はない、実務上とても重要な例外です。第四に、相続のときから売却まで、住んだり貸したり事業に使ったりしていないことです。
次に譲渡の要件です。売却代金が1億円以下であること。そして、家屋を耐震基準に適合させて売るか、取り壊して敷地だけを売ることが必要です。この耐震要件は2024年の税制改正で緩和され、売却後に買主が翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行う場合でも適用できるようになりました。古い家を現状のまま引き渡す取引でも使いやすくなった、実務上とても大きな改正です。
期限は二重に意識してください。売却は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに行う必要があります。加えて、制度自体の適用期限が2027年12月31日までの売却とされています。控除額は原則3,000万円ですが、2024年以降は、その家を相続した相続人が3人以上いる場合、1人あたり2,000万円に減額されています。期限の数え方も具体例で確認しておきましょう。たとえば2026年8月に相続が発生した場合、3年を経過する日の属する年は2029年ですから、2029年12月31日までの売却が条件になります。ただし制度期限の2027年12月31日が先に到来するため、現時点では実質的にこちらが締め切りです(過去にも延長を重ねてきた制度ですが、再延長されるかは未定です)。
適用を受けるには、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」を添えて確定申告することが必要です。確認書は不動産の所在地の市区町村(空き家対策の担当窓口)に申請し、被相続人の住民票の除票、電気・ガスの閉栓証明や使用中止日が分かる資料、家屋の現況写真、売買契約書の写しなどを添えて審査を受けます。発行までに数週間かかることもあるため、確定申告の期限から逆算した早めの準備が肝心です。
数百万円の税金がゼロに。しかも相続人ごとに使えます。
メリットは、なんといっても節税効果の大きさです。数字で確認してみましょう。名古屋市内の実家(昭和55年建築)を相続し、取り壊して2,500万円で売却したケース。親が購入した当時の契約書がなく概算取得費125万円、解体費などの譲渡費用が250万円とすると、譲渡所得は2,125万円。特例がなければ約432万円の譲渡所得税がかかりますが、空き家特例で3,000万円まで控除できれば税額はゼロです。
さらに、この控除は不動産1つにつき1回ではなく、要件を満たす相続人それぞれが使えます。たとえば姉妹2人で実家を半分ずつ共有相続し、4,000万円で売却した場合、それぞれの譲渡所得(各自の持分に対応する分)から最大3,000万円ずつ控除できるため、2人合わせて実質6,000万円分の控除枠が使える計算になります(3人以上の場合は1人2,000万円に減額される点は前述のとおりです)。誰の名義で相続するかを決める遺産分割の段階から、この特例を意識しておく価値は大きいのです。
金銭面だけではありません。誰も住まない実家を持ち続ければ、固定資産税や火災保険料、草刈りや見回りといった維持管理の負担だけで年間数十万円が出ていくうえ、老朽化による損害賠償や特定空家指定のリスクを抱え続けることになります。特例の期限が「早く手放す決断」を後押ししてくれること自体が、ご家族にとってのメリットともいえるでしょう。
良かれと思った行動が、3,000万円控除を消してしまうことがあります。
この特例でもっとも怖いのは、売却前の行動ひとつで適用資格を失うことです。代表例が「空けておくのはもったいないから」と一時的に人に貸してしまうケース。たとえ短期間でも、賃貸に出したり親族を住まわせたり事業に使ったりすると、「相続から売却まで未利用」という要件を満たせなくなり、その後どれだけ空き家に戻しても復活しません。月数万円の家賃収入と引き換えに数百万円の控除を失う、まさに「小さく得して大きく損する」典型例です。また、売りやすくしようと大規模なリフォームや増改築をすると、家屋の同一性が失われて対象外と判断される恐れがあります。売却まで、実家は「現状のまま、使わずに」が鉄則です。
金額面では、1億円以下の判定に注意が必要です。共有で相続した場合は共有者全員の売却代金を合算して判定し、土地を分筆して別々に売った場合なども一体として通算されるため、「持分ごとに見れば1億円以下」という理屈は通りません。都心部の広い土地では思わぬ落とし穴になります。
2024年改正で認められた「買主側での耐震改修・取壊し」を使う場合は、契約書の作り込みが重要になります。買主が翌年2月15日までに工事を行うことを売買契約で約束し、実施を証明する書類を確認書の申請に間に合わせる必要があるため、特例を前提にした特約条項を入れておかないと、買主の事情ひとつで控除が消えてしまいかねません。宅地建物取引士を兼ねる当事務所では、この特約設計を含めた売買のサポートが可能です。
手続き面では、相続税を納めた方が使える取得費加算の特例とはどちらか一方の選択適用であること、控除で税額がゼロになっても確定申告が必須であることも押さえておきましょう。取壊して売る場合には、解体後に敷地を駐車場などに貸すと適用できなくなるほか、1月1日をまたぐ解体は土地の固定資産税を跳ね上げる可能性があるため、解体のタイミングは売却スケジュールとセットで設計することが大切です。
「売れてから調べる」では遅い特例。最初の一歩はご実家の建築年の確認です。
空き家特例は、相続した実家の売却で最大3,000万円(相続人3人以上の場合は1人2,000万円)を譲渡所得から控除できる、節税効果の非常に大きな制度です。その一方で、昭和56年5月31日以前の建築という入口の要件から、未利用の維持、耐震化または取壊し、1億円以下、二重の期限まで、守るべき条件が多く、売却前の行動ひとつで権利を失う繊細さも併せ持っています。
だからこそ、要件の確認は売却活動を始める前に行うのが鉄則です。まずは登記事項証明書や固定資産税の課税明細でご実家の建築年を確かめ、ご自身のケースで使えそうかどうかの当たりを付けましょう。あわせて、売却の前提となる相続登記(2024年4月から義務化・3年以内)も早めに済ませておく必要があります。特例の期限と登記の期限、2つのカウントダウンは相続の日から同時に始まっています。詳細な要件は国税庁ホームページでも確認できますが、老人ホーム入所の例外や取得費加算との有利選択など、判断に迷う論点は個別性が高い部分です。
ごとう司法書士事務所は、名古屋市中区丸の内を拠点に、売却の前提となる相続登記から、司法書士と宅地建物取引士を兼ねる専門家ならではの売却サポート、提携税理士と連携した特例適用の検討まで、ワンストップでお手伝いしています。女性やご高齢の方、外国籍の方のご相談も歓迎です。
▶「うちの実家は空き家特例を使える?」という確認だけでもお気軽に。
名古屋のごとう司法書士事務所(フリーダイヤル0120-290-939)までお問い合わせください。
※本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。税制や特例の適用要件・期限は改正される場合がありますので、実際のお手続きにあたっては国税庁の最新情報をご確認のうえ、司法書士・税理士などの専門家にご相談ください。
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