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相続税の計算の際、債務や葬儀費用の取り扱い

相続は、プラスの財産(積極財産)だけの相続とは限りません。マイナスの財産(消極財産)である借金等の債務も承継します。そこで、相続税を計算するうえで、このプラスとマイナスを調整しないとおかしなことになります。

相続税を計算するうえで、承継する債務は、相続財産の価格から控除できる取り扱いとなっています。したがって、債務全般について検討する必要があります。

また、葬儀費用についても条件を満たすものは、控除できるようになっています。

ここでは、相続財産から控除できる債務や葬儀費用についてチェックしていきます。
賢い相続税の申告をしていきましょう。

債務の取り扱い

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亡くなった方の債務は、法律上は当然に相続人が承継ます。

民法第896条(相続の一般的効力)
「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」

次に、相続税上の取り扱いですが、相続財産の価格から借入金等の債務は、控除できます。

以下、具体的に見ていきましょう。

  • 1
    借入金

銀行のローン、個人間のお金の貸し借りなどの借入金です。控除できる債務としては、債務が確実にある必要があります。

銀行などからの借入金は、残高証明書、金銭消費貸借契約書、不動産登記簿謄本、確定申告書や返済のある通帳などで、借り入れから返済の事実関係を明らかにできます。一方、個人間の貸し借りは、書面でいろいろな約束を残していないこともありますので、注意しましょう。

 

  • 2
    保証債務

他人の保証人になった場合、その他人である主たる債務者が返済しないときは、保証人に請求がきて代わりに返済をしなくてはいけません。では、このような保証債務はそもそも相続の対象になるのでしょうか?

法律上はこの保証債務も相続されます。

一方、相続税上はどのように取り扱われるのでしょうか?

保証債務は、主たる債務者がしないときにはじめて義務が顕在化すると言えます。つまり、主たる債務者が返済をしている状態では実質的に見て債務と呼ぶことは難しいとも言えます。そこで、相続税上は、①保証人が債務の弁済をしなくてはいけない場合で、かつ、➁主たる債務者への求償権を行使しても返還される見込みがない場合には、保証人が代わりに払った分について債務として相続財産から控除できるとしています。

なお、必要書類としては、保証契約書、債権者からの支払通知書や督促状、返済をした口座の通帳などがあります。

  • 3
    連帯債務

連帯債務は、他の通常債務と同様に相続により相続人が承継します。一方、相続税上は、どうでしょうか?

連帯債務者としての負担部分が明らかな場合は、その負担部分が債務控除の対象になります。明らかでない場合は、連帯債務者間で平等の割合で負担しますので、その負担分を債務共助とすることができます。

また、連帯債務者のうち、返済不能な者がいる場合で、代わりに返済をしても求償権によって取り戻せないときは、その返済不能な連帯債務者の負担部分も債務控除できます。

債務の返済状況を総合的に判断することも多く、債務控除額については慎重に検討するようにしましょう。

  • 4
    損害賠償債務

損害賠償には、いろいろな種類があります。契約などの約束違反である債務不履行に基づく損害賠償請求や他人に危害を加えたことによる損害賠償請求などがあります。

法律上は、この損害賠償債務はそうぞ人に承継されるものです。

相続税上は、相続開始時に現存し、確実なものである場合にその額を債務控除額とすることができます。こちらも損害賠償請求権を有している者が、その権利を行使しているか不明な場合や損害賠償債務自体に争いがある場合には、確実な債務とはいえません。

事実関係等をしっかりと確認をして判断するようにしましょう。

  • 5
    租税債務

各種税金についても、法律上相続の対象になります。相続税上も相続開始時に納税義務が発生している未納分の税金は債務として控除することができます。

以下、主な公租公課の具体例です。

【主な公租公課の例】
① 所得税・消費税
➁ 贈与税・相続税
③ 自動車税
④ 固定資産税・都市計画税
⑤ 市県民税
⑥ 個人事業税
⑦ 国民健康保険料

  • 6
    その他の債務

その他、債務に関係しそうなものとして次のようなものがあります。

① 相続財産に関連する費用

不動産など、財産を維持管理する費用、遺言のある場合の遺言執行者の報酬、遺産分割に要する費用、相続手続きを司法書士や弁護士などの専門家へ依頼をした場合の報酬などは、すべて相続税を計算するうえで、債務として控除することはできません。

これらは、相続開始後に発生するものであり、相続開始時に存する債務とはいえないからです。

➁ 消滅時効にかかっている債務

売買代金の請求権や借入金返還請求権などは、いずれも債権であり、一定の期間経過により消滅時効になります。時効は、時効を主張して(時効の援用をして)はじめて、時効の効力である債権の消滅の効力が生じます。つまり援用するかしないかにより債務が消滅するか否かが変わりますが、このような状態はそもそもいずれの場合でも確実に認めらえる債務とは言えません。したがって、消滅時効の期間が経過している債務は、相続税上、債務として控除できないと考えられています。

葬儀費用の取り扱い

亡くなった人がの残した借金、未払い医療費、未納の税金等の債務は、相続人に承継されます。相続税上、これらの債務はプラスの遺産から控除できます。

また、葬儀費用も債務と同様に控除できます。亡くなることで当然発生する出費ということで控除が認められています。ただし、葬儀費用として認められる範囲がありますので、ご注意下さい。以下の表を参考にして領収書等を残しておくようにしましょう。

 

控除できる葬儀費用
〇 葬儀費用になるもの 火葬、埋葬、納骨にかかる費用、戒名料や読経料等、お通夜等にかかる費用、遺体の運搬費用など
× 葬儀費用にならないもの 香典返し費用、墓地購入費用、法要(初七日、四十九日等の費用)など

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