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相続不動産を売る前に知りたい費用と遺産分割の注意点|名古屋の司法書士が解説
相続に関する気になるトピックや情報を配信しています。ご興味のある記事がございましたら、ご参考にしてみて下さい。
売却代金がまるごと手元に残るわけではありません。そして「誰の名義で売るか」で税金まで変わります。
不動産は、相続財産の中でもひときわ高価な財産です。高価であるうえに、現金のように1円単位で分けることができないため、相続では「誰が取得するか」「どう分けるか」をめぐってトラブルの火種になりやすい財産でもあります。
そこで多くのご家庭が選ぶのが、不動産を売却してお金に換え、相続人で分け合う方法です。お金にすれば公平に分配しやすくなり、遺産分割を円満に終えやすくなります。実際、名古屋の当事務所でも「実家を売って兄弟で分けたい」というご相談は非常に多くいただきます。
ただし、売却という選択には2つの落とし穴があります。1つ目は、売買代金から差し引かれる「費用」を見込んでいなかったために、想定より手取りが少なくなること。2つ目は、遺産分割の進め方(分け方の設計)を誤ったために、思わぬ贈与税や親族間のトラブルを招くことです。
今回は、司法書士事務所と不動産事務所を併設する名古屋・中区丸の内の専門家が、相続不動産を売る前に必ず押さえておきたい「かかる費用」と「遺産分割の方法」の注意点を解説します。
手取り額=売買代金−諸費用。この引き算を先に知っておくことが、売却計画の出発点です。
相続した不動産を売却する際には、売主の側にもいくつもの税金や手数料がかかります。「2,000万円で売れたから2,000万円を分けられる」わけではなく、実際に分配できるのは諸費用を差し引いた残りの金額です。
売主が負担する主な費用には、売買契約書に貼る印紙税、不動産会社への仲介手数料、土地の測量費用、登記に関する費用(相続登記の登録免許税・司法書士報酬、住所変更登記や住宅ローン完済に伴う抵当権抹消登記など)、建物を取り壊して売る場合の解体費用や残置物の処分費用があります。さらに、売却で利益(譲渡所得)が出れば所得税・住民税もかかります。
物件や売り方によって金額は大きく変わりますが、目安として、売買代金の4~6%程度は諸費用として消えると見込んでおくと、後で慌てずに済みます。ここでは、ほぼすべての売却で必ず登場する「印紙税」と「仲介手数料など」を中心に見ていきましょう。
貼り忘れると本来の3倍のペナルティ。金額は「いくらで売るか」で変わります。
相続した不動産を売る際に売買契約書を作成すると、その契約書に収入印紙を貼って印紙税を納める必要があります。
税額は売買代金(契約書の記載金額)によって決まり、代金が高いほど印紙税も高くなります。現在は租税特別措置法による軽減措置が適用されており、たとえば売買代金が500万円超1,000万円以下なら5,000円(本則1万円)、1,000万円超5,000万円以下なら1万円(本則2万円)、5,000万円超1億円以下なら3万円(本則6万円)です。この軽減措置は2027年(令和9年)3月31日までに作成される契約書が対象とされています。
注意したいのは、貼り忘れのペナルティです。印紙を貼らずに契約書を作成すると、本来の印紙税額に加えてその2倍、つまり合計で3倍相当の過怠税を課されるおそれがあります。せっかくの軽減措置が台無しになりますので、契約時には必ず確認しましょう。
なお、近年は不動産売買でも電子契約が広がりつつあります。電磁的記録(電子契約)には印紙税がかからないとされているため、対応している不動産会社であれば印紙税の負担自体をなくせる場合もあります。契約前に確認してみる価値はあるでしょう。
費用の中で最も大きい項目。2024年の報酬規定改正で「安い空き家」はルールが変わりました。
相続不動産の売却では、専門知識をお持ちでない方は不動産会社に仲介を依頼するのが一般的で、成約時には仲介手数料がかかります。
仲介手数料は「いくらでもよい」わけではなく、宅地建物取引業法に基づいて上限が定められています。売買代金が400万円を超える場合の上限は「売買代金×3%+6万円+消費税」。たとえば2,000万円で売れた場合、上限は72万6,000円(税込)です。上限の範囲内でいくらにするかは各社が決めるため、会社によって金額もサービス内容も異なります。
また、2024年7月の報酬規定の改正により、売買代金800万円以下の「低廉な空家等」については、売主・買主それぞれから最大33万円(税込)まで受領できる特例が設けられました。地方や郊外の安価な空き家でも不動産会社が動きやすくなった一方、通常の計算式より高くなるケースもあり、この特例を使うには媒介契約の際にあらかじめ説明と合意が必要とされています。古い実家の売却を依頼するときは、手数料の根拠を遠慮なく確認しましょう。
あわせて、査定額の付け方も会社によって差が出ます。高い査定額がそのまま「高く売れる」ことを意味するわけではないため、複数の会社に査定を依頼して、金額の根拠と販売戦略を比較することをおすすめします。そうすれば業者選びで失敗する可能性を減らせます。
仲介手数料のほかに見落としやすいのが、土地の測量費用と登記費用です。
測量費用は必ずかかるものではありませんが、現地に境界杭がない場合や隣地との境界線が不明確な場合には必要になります。まずは法務局に地積測量図が備え付けられていないかを確認しましょう。地積測量図は、土地の所在地番が分かれば手数料を払って誰でも取得できます。隣地所有者の立会いを得て境界を確定させる「確定測量」になると、費用は数十万円規模、期間も2~3か月かかることが珍しくありません。隣地所有者が境界確認書への署名に応じない場合や、隣地の所有者自体が所在不明の場合には、さらに長期化することもあります。売却スケジュールは、測量の要否を早めに見極めたうえで組み立てることが大切です。
登記費用としては、売却の大前提となる相続登記(登録免許税は固定資産税評価額の0.4%+司法書士報酬)のほか、登記上の住所が現住所と異なる場合の住所変更登記、住宅ローンが残っていた場合の抵当権抹消登記などがかかります。相続登記は2024年4月から義務化されており、放置すれば10万円以下の過料の対象にもなり得ますから、売却の予定が固まる前でも早めに済ませておきましょう。
このように、相続した不動産の売却にはいくつもの費用がかかります。「何に・いくら・いつ支払うのか」を一覧にしてから売り出すことが、手取り額の誤算を防ぐ最善の方法です。
「売って分ける」は書面の設計しだい。協議書の一文が、贈与税とトラブルを防ぎます。
相続人が複数いる場合、遺産分割協議によって遺産の分け方を決めますが、その方法には大きく「現物分割」「換価分割」「代償分割」の3種類があります。不動産は現金と違って相続人の間で簡単に分けられないため、実務では換価分割や代償分割がよく利用されます。
まず、換価分割とは、遺産である不動産を売却して現金に換え、その代金を相続人で分け合う方法です。公平に分けやすく、不動産を共有名義のまま残さずに済むのが大きな利点です。
換価分割で最も重要な注意点は、遺産分割協議書に「換価分割である」ことを明記しておくことです。実務では、売却手続きを簡便にするため、いったん代表相続人の単独名義に相続登記をしてから売却し、代金を各相続人に分配する方法がよく採られます。このとき協議書に「売却代金を分配するための便宜上の単独名義である」旨の記載がないと、代表者から他の相続人への代金の分配が「贈与」と扱われ、贈与税の課税リスクが生じかねません。贈与税は税率が高く高額になりやすいため、協議書の書き方ひとつが数十万円、数百万円の差につながります。
また、相続人間の口約束は危険です。仮に、売却して代金を受け取る前に相続人の誰かが亡くなると、その方の相続人(配偶者やお子さん)が話し合いの内容を引き継いでいるとは限りません。むしろ、何も知らない可能性のほうが高いでしょう。「言った・言わない」の争いは、約束を書面に残しておかないことで起こります。つまり、遺産分割協議書は「作ればよい」のではなく、売却と分配の段取りまで見据えて工夫して作成しておく必要があるのです。
税金の面では、換価分割を行うと、相続税とは別に、売却益に対する所得税・住民税(譲渡所得課税)が各相続人に発生し得ることも覚えておいてください。被相続人が住んでいた家を売る場合には、一定の要件のもとで譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例が用意されており、適用できれば課税されないケースも多くあります。特例には期限や細かな要件があるため、売却前に適用の可否を確認しておきましょう。
一方、代償分割とは、相続人の一人が不動産を取得する代わりに、他の相続人へお金などの財産を支払う義務を負う方法です。「長男が実家を取得し、二男へ代償金500万円を支払う」といった形で、実家を残したい場合に向いています。代償として渡す財産は現金に限らず、自分がもともと持っていた別の不動産を渡す方法もあります。
代償分割の注意点も、やはり書面と税務です。遺産分割協議書に代償金の支払いについて明記されていないと、その支払いが遺産分割の一環(代償)ではなく単なる贈与と評価され、贈与税の対象になるおそれがあります。また、代償として現金ではなく不動産などの資産を渡した場合、渡した側に譲渡所得課税が生じることがあるなど、税務上の論点が意外に多い方法です。「遺産分割における代償といえるのか」を、税務の観点からも忘れずにチェックしましょう。
どの分け方が適しているかは、不動産を残したいのか手放したいのか、代償金を支払う資力があるか、相続人同士の関係性などによって変わります。分け方の設計を誤ると後から修正が難しいため、遺産分割協議書を作成する前の段階で専門家に相談されることをおすすめします。
売る前のひと手間が、手取り額と家族関係の両方を守ります。
今回は、名古屋の司法書士が、相続した不動産を売る前に考えておきたいポイントを「費用」と「遺産分割」の2つの視点から解説しました。
不動産の売却には、印紙税や仲介手数料をはじめ、測量費用・登記費用など多くの費用がかかります。手取り額を正しく見積もることが売却計画の第一歩です。そして、相続人が複数いる場合には、換価分割・代償分割といった分け方の選択と、遺産分割協議書への的確な記載が欠かせません。この2つを押さえておくことが、相続不動産の売却をトラブルなく終えるための近道です。
当センターは、司法書士事務所と不動産事務所(宅地建物取引士)を併設しているため、遺産分割協議書の作成・相続登記から、査定・売却活動・決済までワンストップでお手伝いできます。「売る前に、何から手を付ければよいか整理したい」という段階のご相談も歓迎です。どうぞお気軽にお問合せください。
※本記事は2026年7月時点の法令・情報をもとに作成しています。印紙税の軽減措置や仲介手数料の特例、譲渡所得の特別控除などの制度は改正されることがありますので、実際のお手続きの際は最新の運用を司法書士・税理士等の専門家にご確認ください。
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