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相続不動産の賢い売却のやり方|登記簿の確認と取得費が鍵|名古屋の司法書士解説

相続に関する気になるトピックや情報を配信しています。ご興味のある記事がございましたら、ご参考にしてみて下さい。

相続した不動産、「売り方の順番」で手取りが変わることをご存じですか

同じ物件を同じ価格で売っても、売る前の段取りしだいで、手元に残る金額は数百万円単位で変わります。

「相続した実家を売りたいのですが、何から手を付ければよいですか」。名古屋市中区の当事務所に寄せられるご相談の中でも、特に多いご質問のひとつです。

相続した不動産の売却で「賢いやり方」というと、高く売ってくれる不動産会社を探すことを思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろんそれも大切ですが、実は売却額と同じくらい手取り額を左右するのに、意外と知られていないポイントが2つあります。1つ目は、売り出す前に登記簿(登記事項証明書)で不動産の権利関係を確認しておくこと。2つ目は、売却益にかかる譲渡所得税の仕組み、とりわけ「取得費」を証明する資料を早めに探しておくことです。

登記簿の確認を怠ると、いざ買主が見つかってから名義の問題が発覚して売却が何か月も止まることがあります。取得費の資料を探さないまま申告すると、本来払わなくてよかったはずの税金を数百万円多く納めることにもなりかねません。

 

今回は、司法書士事務所と不動産事務所(宅地建物取引士)を併設する名古屋のごとう司法書士事務所が、相続不動産を売却する前に押さえておきたい賢い段取りを、登記と税金の2つの視点からご紹介します。

1 まずは相続登記の確認を|売る前に登記簿でチェックすべき4つのポイント

名義の問題は、買主が見つかってからでは間に合いません。登記簿を1通取るだけで、売却の障害を先回りできます。

相続した不動産は、亡くなった方(被相続人)の名義のままでは売却できません。売買による所有権移転登記の前提として、被相続人から相続人への相続登記が必要です。

ここで押さえておきたいのが、登記は権利が動いた順番のとおりにしか入れられないという原則です。不動産登記は、権利の移り変わりを時系列で正確に公示することで取引の安全を守る制度ですから、「被相続人からいきなり買主へ」と途中の登記を省略することは認められていません。必ず「被相続人→相続人→買主」の順に登記を経る必要があり、この最初の一歩が相続登記なのです。

そこで賢い売却の出発点としておすすめしたいのが、売却活動を始める前に、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して権利関係を確認しておくことです。登記事項証明書は、物件の地番・家屋番号が分かれば誰でも1通数百円で取得できます。確認すべきポイントは次の4つです。

1つ目は、名義人が本当に亡くなった親御さまになっているかです。実務では、「父名義だと思っていた土地が、登記簿を見たら祖父名義のままだった」というケースが珍しくありません。この場合、祖父の相続(一次相続)と父の相続(二次相続)をさかのぼって整理する数次相続の手続きが必要になり、関係する相続人の数も集める戸籍の量も一気に増えます。おじ・おばやいとこにあたる方の協力が必要になることも多く、名義の整理だけで数か月を要することもあります。売却を考え始めた段階で判明していれば余裕をもって進められますが、買主が決まってからの発覚は致命的です。

2つ目は、抵当権などの担保の登記が残っていないかです。住宅ローンを完済していても、抵当権の抹消登記は自動では行われません。完済時の書類が見つかれば手続きは比較的簡単ですが、担保を付けた金融機関がすでに合併や解散をしていたり、明治・大正時代の古い抵当権(いわゆる休眠担保権)が残っていたりすると、抹消までに調査や特別な手続きが必要になります。買主は担保付きの不動産をそのまま買ってはくれませんから、これも早期発見が肝心です。

3つ目は、登記簿上の住所・氏名と亡くなった方の最後の住所・氏名がつながるかです。転居を重ねた方の場合、登記簿の住所が昔のままになっていることが多く、住民票の除票や戸籍の附票で住所の変遷を証明する必要があります。古い住所の証明書類は保存期間の関係で取得できないことがあり、その場合は別の書面で補う工夫が求められます。

4つ目は、建物の登記が現況と合っているかです。増築部分が未登記のままになっていたり、取り壊した建物の登記が残っていたりすると、売買の際に買主側の住宅ローン審査に影響することがあります。土地の地目や面積もあわせて確認しておきましょう。

 

なお、相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化されています。不動産の取得を知った日から原則3年以内(義務化前に発生した相続は原則2027年3月31日まで)に申請しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になり得ます。売却のご予定の有無にかかわらず、登記簿の確認と相続登記は早めに済ませておくことが、そのまま「賢い売却」の準備になります。

2 譲渡所得税とは|「取得費」の証明が手取り額を左右する

額を決める計算式の主役は「取得費」。親御さまが買ったときの資料を探せるかどうかで、納税額が数百万円変わることがあります。

相続した不動産を売却して利益が出ると、その利益(譲渡所得)に対して所得税・住民税・復興特別所得税、いわゆる譲渡所得税がかかります。譲渡所得は次の式で計算します。

収入金額(売却価格)−(取得費+譲渡費用)− 特別控除額 = 課税譲渡所得

取得費とは、その不動産を手に入れるためにかかったお金のことです。相続した不動産の場合は、亡くなった方が購入したときの代金や仲介手数料などを、相続人がそのまま引き継いで計算します。あわせて所有期間も引き継がれるため、親御さまが長年住んだ実家であれば、相続後すぐに売っても税率の低い長期譲渡所得(20.315パーセント)で計算できるのが通常です。譲渡費用には、売却時の仲介手数料や印紙税、建物の取壊し費用などが含まれます。一方で、売るまでの間の修繕費や固定資産税は譲渡費用にできません。ここは誤解の多いところですので注意してください。

さて、この計算式で問題になるのが、親御さまが買ったときの金額、つまり取得費が分からないケースです。購入時の売買契約書が見つからない場合、税務上は売却価格の5パーセントを取得費とみなす概算取得費で計算することになります。これがどれほど大きな差になるか、例で見てみましょう。

名古屋市内の実家の土地建物が3,000万円で売れたとします。契約書が見つからず概算取得費150万円、譲渡費用が106万円とすると、譲渡所得は2,744万円。長期の税率でも税額は約557万円にのぼります。ところが、親御さまが2,200万円で購入した契約書が見つかれば、譲渡所得は694万円に下がり、税額は約141万円。書類ひとつで約416万円もの差です。

そして、ここが意外と知られていないのですが、売買契約書そのものが見つからなくても、取得費の証明をあきらめる必要はありません。購入代金を支払った当時の預金通帳の出金記録、住宅ローンの金銭消費貸借契約書や返済予定表、分譲時のパンフレットや価格表など、購入金額を裏付ける資料が取得費の証明として認められる場合があります。さらに見落としがちなのが、第1章でご紹介した登記簿です。住宅ローンの抵当権設定登記には当時の債権額が記載されており、購入金額を推し量る手がかりになります。売却前に登記簿を確認しておくことは、名義のチェックだけでなく税金の面でも役に立つのです。どの資料がどこまで認められるかは個別の判断となりますので、資料を集めたうえで税理士に相談しながら進めましょう。

もうひとつ、相続ならではの制度として取得費加算の特例があります。相続税を納めた方が、相続税の申告期限の翌日から3年以内(相続開始からおおむね3年10か月以内)に売却した場合、納めた相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得を圧縮できる制度です。また、亡くなった方がひとりで住んでいた古い家屋を売る場合には、譲渡所得から最高3,000万円(相続人3人以上の場合は2,000万円)を控除できる空き家特例が使える可能性もあります。ただし、この2つの特例は併用できず、どちらも「相続から約3年」という期限がありますので、売却のタイミングは特例の期限から逆算して決めるのが賢いやり方です。

 

なお、譲渡所得税は売却した翌年の2月16日から3月15日までの確定申告で自分から納める税金です。売却代金を分配や住み替えに使い切ってしまう前に、納税分を取り分けておくことも忘れないでください。

まとめ|賢い売却とは、「登記」と「税金」を売り出す前にそろえておくこと

登記簿の確認、取得費の資料探し、特例の期限。この3つを先に済ませた人から、有利に売却できます。

今回は、相続不動産の賢い売却のやり方として、売り出す前に押さえておきたい2つのポイントをご紹介しました。

1つ目は登記です。被相続人名義のままでは売却できず、登記は権利の流れどおりにしか入れられません。売却を考えたら、まず登記事項証明書を取得して、名義・担保・住所・建物の現況という4つのポイントを確認することから始めてください。2つ目は税金です。譲渡所得税の計算は「取得費」の証明で結果が大きく変わります。親御さまの購入時の資料を探し、取得費加算の特例や空き家特例の期限から逆算して売却計画を立てることが、手取り額を最大にする近道です。

そしてもうひとつ申し上げたいのは、こうした段取りは、遺産分割協議の段階から売却まで見据えて設計しておくと、いっそうスムーズに進むということです。誰の名義にして売るのか、代金をどう分けるのかを協議書にきちんと反映しておけば、登記も売却も税務申告も迷いなく進められます。

 

名古屋市中区丸の内のごとう司法書士事務所は、不動産事務所を併設し、遺産分割協議書の作成・相続登記から売却活動・決済までワンストップでお手伝いしています。税額の試算が必要な場面では提携の税理士とも連携し、お客さまお一人おひとりの事情に合わせたオーダーメイドのご提案を心がけています。相続した不動産の売却をお考えの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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