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遠方で通えない、忙しくて手が回らない。それでも空き家を守る現実的な方法をご提案します。
相続した実家が、遠方にあってなかなか通えない。仕事や子育てに追われて、管理まで手が回らない。そうして少しずつ足が遠のき、気づけば空き家が放置状態になっている。ご相談の場で本当によくお聞きする状況です。
空き家は、そのまま放置すると建物の傷みだけでなく、ご近所との深刻なトラブルの火種になります。一方で、「売る・貸すはまだ決められない」というご家庭に、無理な決断を迫る必要はありません。実は、きれいな状態を維持することそのものが、思い出と資産価値を守る立派な活用なのです。大切なのは、放置と維持の違いを知り、無理なく続けられる管理のやり方を持つこと。
このページでは、名古屋市中区丸の内の司法書士が、空き家がなぜ問題になるのかという基本から、具体的な維持管理の方法(2023年に改正された隣地の枝のルールも含めて)、そして一歩進んだ賃貸化の判断までをご提案します。
空き家の問題は敷地の中で完結しません。必ず隣へ、道路へ、はみ出していきます。
全国の空き家は約900万戸と過去最多を更新し、住宅の7戸に1戸が空き家という時代になりました。人が住まない家は換気も通水もされず、湿気で柱や土台が傷み、台風や地震のたびに屋根材の飛散や倒壊の危険が高まります。人の気配のない家は、不審者の侵入や放火、ごみの不法投棄の標的にもなります。
そして、空き家問題の厄介なところは、被害が敷地の外へあふれ出すことです。手入れされない庭木の枝が隣家の敷地に越境し、ツタが伸びて電線や電柱に巻き付き、落ち葉が雨どいを詰まらせ、雑草が害虫の温床になる。こうした状態が続けば、ご近所からの苦情は時間の問題で、実際に損害賠償を求める裁判にまで発展した例もあります。瓦や外壁が落ちて通行人にけがをさせれば、所有者は工作物責任として重い賠償責任を負い、「遠方に住んでいて知らなかった」では済みません。
近隣トラブルの怖さは、金銭では測りきれないところにもあります。空き家のあるご近所は、多くの場合、亡くなった親御さまが長年お付き合いしてきた方々です。「あそこの家は荒れ放題だ」という評判は、故人の思い出まで傷つけかねませんし、いざ売却や賃貸に出そうとしたとき、近隣関係がこじれていると、境界の立会いや工事の挨拶まわりといった場面で協力を得にくくなります。逆に、定期的に手入れに通い、顔を合わせるたびに挨拶を交わしていれば、「最近こんな様子だったよ」と異変を知らせてもらえる関係が育ちます。空き家管理の半分は、ご近所との関係管理なのです。
行政の対応も厳しくなっています。空家対策特別措置法により、危険な空き家は特定空家に、その予備軍は2023年12月の法改正で新設された管理不全空家に指定され、勧告を受ければ土地の固定資産税の住宅用地特例が外れて税負担が最大6倍程度になり得ます。特定空家に至れば、修繕や解体の命令、従わない場合の行政代執行(解体費用は所有者に請求されます)まで進み得ます。つまり現在の制度は、「きちんと管理されている空き家」と「放置された空き家」をはっきり区別する仕組みなのです。管理さえ行き届いていれば、空き家を持ち続けること自体は責められません。問題は、放置だけです。
いきなり大きな決断は要りません。まず維持、次に活用の順で十分です。
維持管理は「守りの活用」。将来の選択肢をまるごと残す投資です。
「売るか貸すか決められないなら、せめてきれいに維持する」。これは消極策ではありません。ご家族の思い出が詰まった家を残せますし、いずれお子さまが住むかもしれない、周辺の再開発を待って売り時を見極めたい、といった将来の選択肢をすべて残せる、投資的にも合理的な判断です。建物は、手入れさえ続ければ傷みのスピードを大きく抑えられます。
具体的な管理メニューは、月1回を目安に次のとおりです。すべての窓を開けて1時間ほどの換気。各水道の蛇口を1分ほど開けて通水し、排水口の封水切れ(悪臭・害虫の原因)を防ぐ。天井や押し入れの雨漏りジミの点検。庭木の剪定と草刈り。郵便物の整理(チラシがあふれたポストは空き家の目印になります)。外回りの塀や屋根の目視確認。加えて、台風や大雪の後には臨時の見回りができると安心です。
なぜこのメニューなのか、理由も知っておくと続けやすくなります。家の劣化の最大の敵は湿気です。締め切った家は湿気がこもって木材を腐らせ、カビとシロアリを呼び込みます。換気はその湿気を追い出す基本動作。通水は、排水トラップの水が蒸発して下水の臭気や害虫が上がってくるのを防ぐと同時に、長期間使わない給水管の劣化に気づくきっかけにもなります。雨漏りは、発見が1年遅れるだけで柱や梁の交換という大工事に発展しかねない、早期発見がすべての症状です。つまりこのメニューは、「安く直せるうちに異変を見つける」ための健康診断でもあるのです。1回あたりの所要時間は、慣れれば半日ほど。作業のたびに日付と気づいた点をメモし、写真を残しておくと、将来売却や賃貸に出すときに「きちんと管理されてきた家」であることの何よりの証明になりますし、万一近隣から苦情が出た際にも、管理実績を示す資料になってくれます。
ご近所との関係では、樹木の管理が最重要です。2023年4月の民法改正で、隣地から越境してきた枝は、所有者に催告しても相当期間内に切除されないときは、越境された側が自ら切り取れるルールに変わりました。これは裏を返せば、あなたの空き家の枝が隣に越境していれば、催告のうえ切られても文句を言えない立場になったということ。トラブルが法制度に組み込まれるほど、越境問題はありふれた紛争なのです。枝は「伸びる前に切る」を徹底しましょう。
遠方で通えない方は、月数千円から1万円程度で換気・通水・見回りを代行してくれる空き家管理サービスや、シルバー人材センターの活用が現実的です。巡回のたびに写真付きの報告書が届くサービスを選べば、離れていても家の状態を把握でき、ご近所に「管理されている家」だと伝わる効果もあります。年間数万円の管理費は、放置による資産価値の下落や賠償リスクと比べれば、十分に元の取れる保険といえます。ご自身で通う場合も、名古屋から遠方への交通費を年に数回分積み上げれば同じくらいの金額になることは珍しくなく、「委託は贅沢」とは限りません。ご家族で分担する、隣近所の方に見回りだけお願いして季節のご挨拶を欠かさない、といった組み合わせも含めて、無理なく続く体制を作ることが何より大切です。
あわせて、空き家になると火災保険の契約条件が変わることがある点にもご注意ください。住宅として契約した保険は、空き家になった時点で補償の対象外とされたり、保険料区分が変わったりすることがあり、無保険のまま台風被害で隣家に損害を与えるのが最悪のシナリオです。保険会社への連絡と契約の見直しは、空き家になったら最初にやるべき手続きのひとつです。そして前提として、相続登記(2024年4月から義務化・3年以内・正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象)を済ませておくことが、管理体制づくりのスタートラインです。名義が亡くなった方のままでは、火災保険の契約者変更も、管理サービスの契約も、いざというときの売却や賃貸もすべて宙に浮いてしまいます。「誰の家として管理するのか」を登記で確定させることが、すべての土台になります。
「維持」の次の一手。人に住んでもらうことが、最高のメンテナンスになります。
維持管理が軌道に乗ったら、賃貸化を検討する価値があります。人が住む家は換気も通水も自然に行われ、家賃収入で管理費がまかなえるどころか、収益まで生まれます。古い戸建てでも、水回りを中心にリノベーションすれば、庭付き・駐車場付きを好むファミリー層の需要が見込めます。入居者の募集や家賃回収、クレーム対応は不動産管理会社へ委託(家賃の5%前後)でき、遠方にお住まいでも大家業は成り立ちます。「いずれ家族が使うかもしれない」なら、期間満了で確実に契約が終わる定期借家契約という工夫もあります。
賃貸に出す前には、リフォーム費用の見積もりと家賃相場の確認を必ずセットで行ってください。たとえばリフォームに300万円かけて月7万円で貸せるなら、単純計算で3年半ほどで回収でき、その後は収益に変わります。逆に、かけた費用に見合う家賃が取れない立地なら、リフォームは最小限にとどめる判断もあり得ます。数字で試算してから決める。これが賃貸化の鉄則です。
一方、慎重になっていただきたいのが、建物を取り壊して新築アパート・マンションを建てる大型投資です。数千万円の借入に加え、入居者の募集費用、退去のたびの原状回復費、定期的な修繕・メンテナンス費、毎年の固定資産税、そしてローン返済が重なり、短期的な利益は限定的。人口減少の時代に、数十年のローン期間を通じて入居者を確保し続けられるかという問いに、正面から向き合う必要があります。建築会社の収支プランは満室前提になりがちですから、空室や家賃下落を織り込んだ長期の損得で判断してください。空き家対策のはずが、より大きな負債を抱えては本末転倒です。
放置だけが選択肢にない。月1回の管理からでも、解決は始められます。
空き家は、放置すれば建物の傷み・近隣トラブル・税負担の増加という問題を確実に引き起こします。しかし、月1回の換気・通水・剪定という維持管理を続けるだけで、その大半は防げます。多少の手間はかかりますが、放置は周囲への迷惑になってしまいますから、まずは無理なく続けられる管理体制を作り、そのうえで賃貸などご自分に合った活用方法で、空き家を資産として有効に活用されてみてはいかがでしょうか。
ごとう司法書士事務所は、名古屋市中区丸の内を拠点に、前提となる相続登記から、司法書士と宅地建物取引士を兼ねる専門家ならではの賃貸・売却の比較検討まで、空き家のお悩みをワンストップでお手伝いしています。「まだ売るとも貸すとも決められない」という段階のご相談も大歓迎です。女性やご高齢の方、外国籍の方にも、お一人おひとりの事情に合わせて丁寧にご対応します。
▶遠方の空き家の管理にお困りの方も、これからの活用を考えたい方も。
名古屋のごとう司法書士事務所(フリーダイヤル0120-290-939)までお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。法改正や自治体の制度は変更される場合がありますので、実際のお手続きにあたっては司法書士などの専門家に最新の取扱いをご確認ください。
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