
名古屋で相続相談・相続登記なら
ごとう相続手続き相談センター
運営:ごとう司法書士事務所・ごとう不動産事務所
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内三丁目15番3号
TCF丸の内ビル6階
家督相続の廃止から約80年。けれど意識は、法律より長生きしています。
「うちは本家だから、財産は長男が継ぐと決まっている」「嫁に行った娘に相続の口出しはさせない」——。相続のご相談の場で、今もこうした言葉を耳にします。一方で、「私にも権利があるはずなのに、おかしいと言えない」と苦しむ娘さんたちの声も。この衝突の根っこにあるのが、家督相続という古い制度の記憶です。戸主の地位と全財産を長男がひとりで承継するこの仕組みは、昭和22年に廃止されました。今の法律では、長男も二男も、嫁いだ娘も、相続分はまったく同じです。
けれど、この記事は「長男の言い分は時代遅れ」と断じるためのものではありません。家や田畑、お墓を守ってきた長男側の事情にも、法律はちゃんと応える道具を用意しています。そして興味深いことに、何十年も前の古い登記を今から行う場面では、廃止されたはずの家督相続が実務に顔を出すことさえあるのです。このページでは、名古屋市中区丸の内の司法書士が、家督相続と今の相続の違い、意識と法律の折り合いのつけ方、そして旧法が今も生きる登記の場面までを、実務の目線でご説明します。
長男も、嫁いだ娘も、相続分は同じ。例外を作れるのは遺言と全員の合意だけです。
まず、歴史の整理から始めましょう。戦前の民法には家制度があり、家の統率者である戸主が亡くなると、原則として長男が戸主の地位と全財産をひとりで引き継ぎました。これが家督相続です。家の財産を分散させず、家業と祭祀を代々つなぐための仕組みでしたが、日本国憲法の個人の尊厳と両性の平等の理念のもと、昭和22年(1947年)に廃止されました。以来約80年、今の民法の答えはこうです。子は、長男であろうと末の娘であろうと、結婚して姓が変わっていようと、相続分は全員同じ。「嫁に行った娘には権利がない」「長男が全部もらうのが当たり前」という言葉に、法律上の根拠はひとかけらもありません。配偶者は常に相続人となり、子どもたちと財産を分け合います。これが、誰にも動かせない出発点です。長男の嫁が介護を一手に担っても、その嫁自身は相続人ではない——そんな現行法の割り切りも、この平等原則の裏返しです。
ただし、ここからが大切なのですが、法律は「均等に分けなければならない」とも言っていません。相続人全員が心から納得して「財産は長男がすべて相続する」という遺産分割協議を結ぶなら、それは完全に有効です。問題は、「決まっている」という空気で署名を迫ることと、「全員で話し合って決める」ことの違いにあります。前者は、娘さんたちの権利を踏みにじる無効の火種であり、後者は、家族の選択として尊重されるべき合意です。実際の現場では、この境界線で多くの家族が揺れます。長男側には長男側の現実があります。親と同居して介護を担った、家業の田畑を守ってきた、お墓と仏壇の面倒を見ていく——。「全部もらって当然とは言わないが、同じ割合というのも納得できない」という思いです。実は、法律はこの思いにも道具を用意しています。介護や家業への貢献は寄与分として相続分に上乗せでき、相続人でない長男の妻の介護も特別寄与料として金銭請求の道があります(それぞれの記事でご説明しています)。そしてお墓や仏壇は、そもそも遺産分割の対象外。祭祀財産として承継者がまとめて引き継ぐ別枠の仕組みで、「墓を守るから財産も全部」という理屈とは切り離して扱われます(お墓と祭祀承継の記事をご覧ください)。つまり今の法律は、長男の貢献は貢献として評価し、財産は権利として分け、祭祀は別枠で承継する——と、問題を切り分けて解くようにできているのです。
「本家を守る」と「きょうだいの権利」は、両立できます。設計の問題です。
では、本家の家と田畑を長男に集中させたい——そんなご家庭は、どう設計すればよいか。一番の本命は、親の遺言です。「自宅と田畑は長男に相続させる」という遺言があれば、遺産分割協議そのものが不要になり、承継は親の意思として実現します。ただし、他のお子さんには遺留分(最低限の取り分)がありますから、預貯金や生命保険で他のきょうだいに配慮した配分を組み合わせるのが、争いを生まない設計です。なぜ長男に集中させるのか——その理由を付言事項に書き添えることで、きょうだいの納得はまるで違ってきます。遺言がないまま相続が始まった場合の道具は、代償分割です。長男が不動産を取得する代わりに、他の相続人へ代償金を支払って調整する方法で、「家は守る、権利も尊重する」を両立させる実務の定番です。代償金の原資がなければ、親が生前に長男を受取人とする生命保険を掛けておく、という備えが効きます(実家の分け方の記事で詳しくご説明しています)。もうひとつ、時代の変化も添えておきましょう。「長男だから継ぐ」が当然でなくなった今、継ぎたくない長男の悩みも増えています。都会で家庭を持った長男が本家の田畑を押し付けられて困る——家督意識は、継がせる側だけでなく継ぐ側にも重荷になり得るのです。承継は血の順番ではなく、意思と適性で決める。家族全員でそう頭を切り替えることが、令和の本家を守る第一歩かもしれません。嫁いだ娘さんの側にも、ひと言。取り分を求めることは、はしたないことでも家への裏切りでもなく、法律が認めたあなたの権利です。そのうえで、譲るなら納得して譲る。印鑑を押す前に、財産の全体像の開示を求めることは、決して失礼ではありません。実務でよくお伝えするのは、「怒りではなく、質問から始めましょう」ということです。「財産の一覧を見せてほしい」「実家の査定を取ってみない?」という事実確認の問いかけなら、角を立てずに話し合いの土俵を作れます。感情のぶつかり合いになる前に、数字と書面を間に置く。それが、きょうだいの縁を守りながら権利も守る、一番の知恵です。どうしても話し合いにならなければ、家庭裁判所の調停という、第三者を交えた冷静な場もあります(遺産分割調停の記事をご覧ください)。
さて、この記事にはもうひとつ、実務家ならではのお話があります。廃止されたはずの家督相続が、今も登記の現場に顔を出すのです。相続の手続きには「いつ亡くなったかの時点の法律を適用する」という大原則があります。したがって、昭和22年5月2日までに開始した相続——たとえば戦前に亡くなったひいおじいさま名義のままの土地——を今から登記する場合、適用されるのは旧民法。家督相続人がひとりで承継したものとして登記します。相続登記の義務化で、こうした超・古い名義の整理が各地で動き出しており(昔の相続の期限は2027年3月31日です)、「家督相続による所有権移転登記」は決して過去の遺物ではありません。そして面白いことに、この場面では家督相続が味方になります。現行法で処理すれば相続人が数十人に膨らむ数次相続も、起点が家督相続なら承継者はひとり。はんこ集めが劇的に軽くなることがあるのです。実例をひとつご紹介します。明治生まれの曾祖父名義のままの山林について、ご相談者が調べた現行法ベースの相続人は30人超。途方に暮れていらっしゃいましたが、戸籍をたどると曾祖父の死亡は昭和15年で、家督相続人である祖父がひとりで承継していたことが判明。祖父から父、父からご相談者という流れで整理でき、関係者は一気に数人まで絞られました。「昔の制度に助けられるとは思わなかった」と驚かれたものです。もちろん、家督相続の確認には戦前の古い戸籍——旧字体の手書きで、判読にも知識が要るもの——を丹念にたどる作業が伴いますし、誰が家督相続人に当たるかの判断には旧民法の理解が必要です。この部分は、戸籍を読み慣れた専門家の出番と割り切っていただくのが早道でしょう。古い名義の土地をお持ちの方は、あきらめる前に、まず戸籍と死亡年月日の確認を。歴史が、思わぬ近道をくれることがあります。
「家を守りたい」も「権利を守りたい」も、どちらも正面から受け止めます。
本家の承継設計から、娘さんの立場のご相談まで。
当事務所は、相続と不動産を中心業務とする司法書士事務所であり、代表は宅地建物取引士として不動産事務所も経営しています。承継の設計も権利の確認も、ご事情に合わせてお手伝いします。
戸籍の長い旅になる案件こそ、費用の見通しを最初に。
家督相続がからむ古い登記は戸籍の収集量が読みにくいものですが、調査の段階ごとに費用をお示しし、納得のうえで進めていただけます。
守る田畑と、手放してよい土地。仕分けからお手伝いします。
宅建業者として土地の市場性を見極められる当事務所なら、承継する資産と現金化する資産の仕分けまで、現実的にご提案できます。
お気軽にご相談下さい。
家督相続は昭和22年に廃止。今は全員同じ相続分。長男承継は遺言と代償分割で設計する。
家督相続は昭和22年に廃止され、今は長男も嫁いだ娘も相続分は同じです。「長男がすべて」は、全員が納得した協議か、遺留分に配慮した遺言によってのみ実現できる設計であって、「決まっていること」ではありません。長男側の介護や家業の貢献は寄与分・特別寄与料で評価でき、お墓と仏壇は祭祀承継という別枠。本家の集中承継は、遺言+付言+生命保険や代償分割で、きょうだいの権利と両立させるのが現代の作法です。一方、昭和22年5月2日以前に開始した古い相続の登記には今も旧法が適用され、家督相続が数次相続のはんこ集めを劇的に軽くしてくれることも。伝統と権利の折り合い、私たちが設計します。
ごとう司法書士事務所は、名古屋市中区丸の内を拠点に、「難しいことを簡単に」という理念のもと、法律用語の誤解がトラブルにつながらないよう、家族や相続人の方によってすべて異なる相続の形に個別に対応しています。本家の承継設計や遺言書の作成支援から、家督相続がからむ古い相続登記、代償分割の実行、不動産の仕分け・売却まで、司法書士と宅地建物取引士の両輪で、女性やご高齢の方、外国籍の方のご相談も丁寧にお受けしています。
▶「長男が継ぐもの、と言われて迷っている」。その疑問、法律の答えを聞いてから考えませんか。無料相談を承っている名古屋のごとう司法書士事務所(フリーダイヤル0120-290-939)まで、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。古い相続への適用法令の判断は個別の事案により異なりますので、実際のお手続きにあたっては専門家にご相談ください。
〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内三丁目15番3号 TCF丸の内ビル6階
名古屋市地下鉄桜通線又は名城線「久屋大通駅」:桜通線側の1番出口から徒歩5分
名古屋市地下鉄桜通線又は鶴舞線「丸の内駅」 :桜通線側の4番出口から徒歩6分
9:00~19:00
土・日・祝(ただし、事前予約により相談可能)
※フォームからのお問合せは24時間受付しております。